【 2018/06/07 】

ユリス・ナルダン - 人と時計のストーリー ~ ミニチュアペインティングに思いを込めて(後編)

腕時計にはそれぞれ個性があり、人が腕時計を手に入れる理由や過程も様々。時計があれば、その一つ一つにストーリーがある。前編につづき、大切な家族と愛する犬、そしてミニチュアペイントにまつわるストーリーをお届けいたします。


チャッピーとクッキー、メイが描かれた時計

本国から届いたデザイン画など


「ですので、仕上がりが良くなることは、ある程度は確信できていました。でもそれは、担当の方が細かく打ち合わせしてくださったこと。そして、途中で状況を確認できたことが大きかったと感じています」。


メイが描かれた時計を手に取り、思い出を語るI様
「後日、チャッピーとクッキーの時計をオーダーしたことを母に伝えたところ、『私も作りたい』という話になったんです」。
 I 様のお母さんがいっしょに暮らしていたのは、チワワのメイ。しかし当時、お母さんは施設に入っていたため、大好きなメイとは離ればなれになっていた。
「施設は私の自宅の近所なので、散歩に連れて行けば会える距離なのですが、『メイが描かれた時計があれば、いつもいっしょにいられる』というので、もう1本、母のためにメイの時計をオーダーすることにしたんです」。
 しかも、高齢だったお母さんに少しでも早く手に取ってもらえるよう、I 様は自身の時計製作を後回しにしてほしいと、工程の変更を依頼。それを受けてユリス・ナルダンでは、メイの時計、チャッピー&クッキーの時計の順序で製作を進めていった。
「ある時、仕上がりに近い状態の写真が届いたので、それを母に見せたのですが『メイの時計もいいけど、チャッピーとクッキーもいいわね』って言うんです。それを担当の方に伝えたところ、私に内緒でメーカーにお願いしてくださったみたいで、2本の時計が同時に出来上がってきたんですよ」。


メイが描かれた時計

チャッピーとクッキーが描かれた時計




チャッピーとクッキーが描かれた時計をはめて思い出を語るI様
 しかし、時計が I 様の手元に届く2日前、お母さんは永逝された。
「完成した時計を見たら、母はどっちがいいって言ったでしょうね。もしかしたら『両方いい』って話したかもしれません」。
 ミニチュアペインティングとお母さんとの思い出を、笑顔で話す I 様。手元にある2本の時計は、その日の服装や気分に合わせて着け替えているのだとか。そして「いっしょにお散歩する」というコンセプトで製作された時計は、ふと目を遣ると愛犬と目が合い、心が和むという。
「製作途中の写真は見せていただいてはいたのですが、期待を超える出来上がりでした。飼い主の私が見ても『よく出来てるな』って思いますが、友人や知人にも『あっ、かわいい!』って言ってもらえるんですよ」。